プロフィール

 神村 勝太郎さんは、骨組み、紙張り、文字・絵描きといった提灯づくりの全工程を一人でこなす県内ただ一人の職人だった。
 戦後、神村さんは傘・提灯職人だった父・増治さんの仕事ぶりを見ながら技術を覚えていった。  戦前に勤めていた大阪の化学工場に復帰しようとしたら、増治さんから「長男だから家の仕事を手伝うように」と説得され提灯づくりの道に進んだ。
 「本当に手先が器用で、大工さんの仕事でも、左官さんの仕事でも、手元を見て全部自分のものにしてしまうような人でしたから、提灯づくりもお父さんを手伝っているうちにコツを覚えていました」と妻のチヨ子さん(75)は懐かしそうに話す。

産業分類 伝統的産業
認定年度(平成) 平成9年
マイスターの分野 提灯製造
氏名 神村 勝太郎
ふりがな かみむら かつたろう
性別
生年月日 大正15年9月1日(平成14年7月22日 76歳で他界)
住所 上越市大町5丁目

作品

■提灯製造の道具 木の型

注文を受けると神村さんは、代々伝わった多くの木の型の中から合うものを選び、骨組み、紙張りと作業を進めた。 文字や絵・家紋などは、まず手本や型紙づくりから始めた。 それを紙張りの終わった提灯の中に置き、電灯で照らし影を鉛筆でなぞった後に色を入れた。 文字や神社に奉納した人の名前を何度も確認するなど、仕事は慎重で非常に丁寧。
■提灯づくりに励む神村さん

木の型に掛けた横の骨組み(竹ひご)一本一本の縦方向に糸を絡める製法は上越地方独特のもので、 引っ張ったり、縮めたりする提灯の紙だけに力がかからないよう全体の強度を高めた。 「良いものにし、長く使ってもらいたい」という職人魂が生んだ技術といえる。 また、向上心を常に持ち、有名な神社に出向いた時は、忘れず提灯をカメラに収めていた。 おかげで喜ばれることはあっても「苦情を受けることはなかった」(チヨ子さん)という。
■神村さんが手掛けた提灯

バブルのころは神社や町内会などから注文が相次いだものの、その後の注文は下降線に。 二人の子供が女性だったこともあるが「時代の流れには逆らえない。男の子がいても継がせなかったでしょう」とチヨ子さんは振り返っている。
財団法人 自治総合センター