プロフィール

 是木 幸夫さんは、機械の修理だけでなく、注文に応じて改造もし、新しい機械の製作までやってのける頼もしい存在だった。
 父親の幸治さんに諭された「手に職を持て」のひと言をしっかり胸に受け止め、東京で10年間、コイルの巻き替えなどモーター修理の修業を積んだ。この間に通信教育で電気関係を学んだことが大きな財産になり、仕事の幅を広げ、地元に帰ってから旋盤工だった父親と一緒に工業所を始めた。旋盤の技術は父親の仕事を脇で見ながら覚えていった。
 妻の久美さん(70)は「壊れた機械の部品は、いざという時に役に立つので大事に残していましたし、お客の要望にこたえようと自分で図面まで書いて、機械づくりに情熱を注ぎ込みました」と話す。

産業分類 生活密着型技術
認定年度(平成) 平成10年
マイスターの分野 機械修理・改良
氏名 是木 幸夫
ふりがな これき ゆきお
性別
生年月日 昭和7年10月28日(平成16年1月 71歳で他界)
住所 上越市仲町6丁目

作品

平成10年10月の上越産業フェスティバルより

 機械修理などの受注先は、地元の鉄工、木工をはじめ、みそ、しょうゆ、酒造業など。何でもそつなくこなし、遠くにある機械のメーカーと違ってすぐに駆けつけてくれる是木さんは大変重宝された。
 使い込むうちにへたりや異音を発生するモーター、ベアリングなどのメンテナンス、部品交換のほか、機械に新しい用途を加える改造も手がけた。細身だったことからどんなに狭いところにでも入り込み、お客の要望に応えていた。
車いすの人からの注文で実際につくった部品

 受けるのは事業所の依頼だけではなかった。消雪用井戸のポンプが壊れたので来てほしいと、お年寄りから電話があればいやな顔一つせず出向いて修理した。車いす生活の人から台所の流し台を上下できるようにしてほしいと言われれば、なんとしてでも期待に応えようとし実際に仕組みをつくりあげた。
 残念ながら是木さんの技術を受け継いだ人はいないが、人が困っていると損得抜きで尽くした是木さんの姿はいまでも人々の心にはっきりと刻まれている。
財団法人 自治総合センター