プロフィール

 看板の製作に携わり四十五年以上がたつ。近年、コンピュータが普及している業界だが、強い意志で「手のぬくもり」にこだわり続ける。一切、コンピュータを使用せず、自ら筆を握って各種書体を自在に手書きする。県広告美術協同組合理事や同組合上越支部長を務めた経験もある。自分を「長老」と呼び、現在は同支部で地元同業者の相談役として後輩達からの信頼が厚い。
 昭和三十年台中ごろ当時のいづもや百貨店内の映画館の宣伝部で映画ポスターなどの製作を始めたのがきっかけ。その後、義兄と共に商売を始めた後に独立。今の松井看板店がスタートした。「仕事は見て覚えた。手探りでしたよ。高所に上っての作業や土方や大工並みの仕事など、身体を張って製作してきましたよ」と振り返る。

産業分類 生活密着型技術
認定年度(平成) 平成11年
マイスターの分野 生活密着型技術
氏名 松井 健作
ふりがな まつい けんさく
性別
生年月日 昭和6年1月23日
住所 上越市北本町2丁目

松井さんの仕事

 筆を多様に使い分けての看板作り。顧客の注文にこたえ自在に文字を描く。このほかにも糸ノコギリを使用した切り文字の加工技術も光る。糸ノコや看板を曲げるためのヒーターなど、作業場にある道具のほとんどは、自分の使い勝手の良いように手作りされたということにも驚く。
 過去には従業員もいたが、現在は松井さんがただ一人。自宅と併設している作業所で黙々と仕事を続ける。時代の移り変わりとともにコンピュータ技術が発達したが、「半分あきらめましたね。でも、求めようとはしなかった。」。その理由を「これからの看板屋はコンピュータがなければ商売にならない状態になっている。でもやはり、手書きの文字でしか『ぬくもり』を感じることができないんです。手をかけることによって文字が生きてくるんです。」と語る。
 現在も現役として注文された看板製作に追われる毎日。「今まで私を支えてきてくれた皆さんや妻には本当に感謝している。これからも腕を磨いて業界のために尽くしていきたい」と情熱は尽きない。

(平成12年2月5日紙面記事 上越タイムス提供)

財団法人 自治総合センター